まこと保育園

嘉麻市 2019
PHOTOイクマ サトシ(TechniStaff)
Completion : 2019.06
Principal use : Nursery school(保育園)
Structure : W construction
Total floor area : 714.42 m²
Building site : Fukuoka, Japan

豊かな自然の息づかいを継承する保育園

計画地は南東側は田園風景が広がり、南西側は住宅が密集する準都市計画区域に位置する。接道する道路より約4m高台の敷地は住宅街の奥に眺望がひらけ南の英彦山系まで眺めることができる自然豊かな地域である。また敷地内には旧園舎時代からのケヤキやメタセコイヤ、桜など様々な樹木が森を形成している。前身の保育所設立が昭和48年のため既存園舎は築46年が経過しており老朽化が目立っており、今回地域の待機児童解消のための増員を兼ねた改築が計画された。設計にあたり、保育園から「既存の森を活かした保育園にしたい」、「既存園舎を使用しながら改築工事をすすめたい」との要望が示された。できる限り既存の森を活かし、建築にとりこめるように広大な園庭の中に既存園舎と同じL型の平面形を継承し、保育室を森に近づけるよう配置を行った。園児たちが使用するすべての保育室、乳児室に豊かな自然光と木々の緑、森からの木漏れ日が入り込むよう快適な南側に面し大きな開口部を配置した。園舎と園庭(森)との中間領域として屋外テラスや中庭を配置し、緩やかに内外部空間につながる空間と多様な新しい居場所を提供している。また旧園舎は鉄骨造であったが、園児たちに木のぬくもりや手触りを感じてもらうこと、既存の森と呼応できるよう木造を選択した。屋根は周辺の山々の稜線を配慮しながら既存園舎の緩やかな片勾配を継承し、緑の木々の中に溶け込んでいる。既存園舎の跡地は新たな駐車場として整備され、保育園の機能充実を図ると共に殺風景になりがちな駐車場側に新しい木々を配置した。新たな木々は既存の森とともに子どもたちを見守りながら、地域の豊かな自然環境を継承し、成長していくことだろう。今後、この豊かな自然環境に包まれた子どもたちが健やかに成長すること、保育園が「こどもの森」として地域に癒やしと安らぎの場を提供していくことを期待している。